《直言》大型店と共奏する地方創生舞台

2025.05.30

《直言》大型店と共奏する地方創生舞台

「コストコ南アルプス倉庫店」がオープンして1カ月が経過した。心配されていた交通の混乱はほとんど見られず、客足も順調である。オープン後1カ月間の来店者数は予想の2倍を超え、全国37店舗中で2番目の多さを記録したと報じられた。

筆者としては、コストコそのものよりも地域経済への波及効果が気になるところである。今回は、隣接する体験型複合施設「fumotto(フモット)南アルプス」(以下、フモット)に注目することにした。

当初、フモットはコストコと同時開業を予定していた。しかしコストコの開業が約1年延期されたため、 フモットは一足先に2024年6月30日にオープンした。以後約1年間はコストコへの来店客がいない状況で営業を続けてきたのである。

それでも開業直後の7月・8月は話題性もあって上々の賑わいを見せた。ところが9月以降は徐々に客足が鈍り、集客を図るために様々なイベントを開催した。

昨年8月から今年3月までの半年間で、およそ120のイベントを実施した。とりわけ今年2月には、地元の祭事「十日市」の第2会場としてフモットの地域交流エリアを提供した。「十日市祭典2025」と銘打ったこの催しには約160もの店舗が出店し、盛況裏に幕を閉じた。

そして、いよいよコストコがオープンし、フモットにも大きな追い風が吹くことが期待されている。筆者は、コストコ来店客をメインターゲットに据えた運営戦略に切り替えるものと考えていた。

ところが、フモットを運営している「ヒカレヤマナシ」社長・竜沢恒氏の言葉は異なっていた。これまでと同様に地元を第一の対象とし、運営方針を変えないというのである。

そもそも フモットは官民協働で生まれた観光拠点であり、地方創生の舞台である。コストコはあくまで集客の手段に過ぎず(とはいうものの、大きな存在には違いないが)、地域ならではの魅力を創出することこそが本来の使命である。そして、この考えを貫くというのだ。もちろんコストコ来店客も重要ではあるが、まずは地元に愛されてこそ、やがて県外の人々にもその魅力が伝わるという考えである。

「観光」という言葉は、その地域の自然や文化、産物、暮らしなどの「光」をよく「観る」ことに由来する。フモットを「光る場所」に育てたい。筆者は、そんな想いを竜沢氏に感じた。

そして今年のメインイベントは「ナイトマーケット」である。7月18日から8月31日まで、約50日間の連続開催を予定している。提灯によるライトアップ、ナイトプール、屋台、縁日、ナイトBBQ、花火広場、ルーフトップバー、DJナイトなど、週替わりで様々なイベントを開催し、地元の食・文化・交流を夜のエンターテインメントとして演出するという。

竜沢氏は現在、スポンサー集めや出展者募集に奔走しているほか、コストコ直通バスの運行も検討中である。フモットが地域の「光」となる日を、大いに期待したい。


(山梨総合研究所 理事長 山梨学院大学 名誉教授 今井 久)

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