《教えてFPさん》学生時代の年金、追納で備えを

2025.05.02

《教えてFPさん》学生時代の年金、追納で備えを

ゴールデンウイーク、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

先月は「学生納付特例制度」についてご紹介しましたが、今回はそれに関連して、「追納」制度についてお話しします。

国民年金の保険料は、経済的な理由で支払いが難しいこともあります。しかし、2年間納めないと「未納」とみなされ、制度に加入していない扱いになってしまいます。将来の老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金も受け取れなくなる可能性があるため注意が必要です。

経済的に厳しいときには、「学生納付特例」のほか、「免除」や「納付猶予」の制度もあります。「免除制度」は所得が一定以下なら保険料が全額または一部免除されます。対象となる事情は失業や収入減、生活保護などさまざまです。

「納付猶予制度」は50歳未満(学生を除く)の方が対象で、所得要件を満たせば支払いを先送りできます。

これらを利用した期間も、年金受給資格の「加入期間(10年以上)」に含まれ、障害・遺族年金の受給にも影響しません。ただし将来の年金額への反映には差があり、「免除期間」は保険料を全額払ったときより少ない額で反映(最大8分の7)され、「猶予期間」は納付しない限り年金額には反映されません。

こうした場合に活用できるのが「追納」制度です。過去に「免除」「猶予」「学生納付特例」を受けた期間について、最大10年間さかのぼって保険料を納められます。2025年5月に申請する場合、15年5月以降の分が対象となります。


※日本年金機構ホームページより作成


追納の最大のメリットは、将来の年金額を増やせる点です。

例えば、学生納付特例で猶予されていた2年分を追納すれば、基礎年金の満額(25年度は約83万円)に近づき、追納しなかった場合と比べて年額で約4万円多く受け取れます。年金は一生涯支給されるため、長生きするほど差は大きくなります。

また、追納した保険料は全額が社会保険料控除の対象となり、所得税や住民税の負担も軽減されます。

ただし、追納には条件があります。猶予の承認から10年を過ぎると原則追納できません。さらに、承認の翌年度から3年度目以降は加算額、いわゆる利息が上乗せされます。例えば、22年度分(当時1万6590円)を25年に追納すると、150円加算され納付額は1万6740円になります。なお、追納は古い月分から順に納付しなければなりません。

こうした加算を避けるには、できるだけ早め、特に2年以内の追納がおすすめです。一方で、社会保険料控除を活用し、収入が増えた時期にまとめて納めるのも選択肢の一つです。

申し込みは日本年金機構のホームページから「追納申込書」を入手するか、「ねんきんネット」で作成し、年金事務所に提出します。納付は一括または分割のいずれも可能です。

将来の年金制度がどう変わっていくかはわかりませんが、公的年金は生涯の生活を支える大切な収入です。学生納付特例を利用された方も、「追納」を検討してみてはいかがでしょうか。


(FPオフィス ライフエイドファイナンシャルプランナー 三沢恭子)

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