《教えてFPさん》どうする⁉退職後の健康保険

2025.03.07

《教えてFPさん》どうする⁉退職後の健康保険

3月は別れの季節。年度末でもあり、卒業や転勤、定年退職される方もいらっしゃるのではないでしょうか。今日は退職後の健康保険について考えてみたいと思います。

日本には「国民皆保険制度」があり、すべての人が公的医療保険(被用者保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度のいずれか)に加入することが義務付けられています。

退職後には「健康保険の任意継続」、「国民健康保険に切替」、「家族の健康保険に加入」といった選択肢があります。詳しくみていきましょう。

「任意継続」は、退職日まで継続して2カ月以上の被保険者期間があった場合、退職日翌日から20日以内に申請することで、これまでと同じ健康保険に最長2年間(任意で脱退可能)加入できるという制度です。保険料は退職時の給与ランクである標準報酬月額を基に保険料率を乗じて計算され、労使折半はなくなり全額自己負担となります。ただし、標準報酬月額には上限が設けられており、協会けんぽは32万円(2025年度)、組合健保は、全被保険者の平均標準報酬月額までとしているため退職時の所得額が上限を超えていると保険料を安く抑えられることがあります。また、組合健保では高額療養費の上乗せとして一部負担還元金など付加給付があるので、任意継続となっても適用されるのか確認しておくと良いでしょう。更に、大企業の組合健保の中には後期高齢者医療制度に移行する74歳まで加入できる「特例退職被保険者制度」を備えているところもあります。制度利用には、組合健保への加入期間や老齢厚生年金の受給権が発生していることなど条件がありますので、事前に情報をキャッチしておけると選択肢が広がります。

任意継続は保険料が全額自己負担となるもののこれまでと同様の給付(出産手当金や傷病手当金は除く)を受けることができ、扶養家族も保険料なしで引き続き健康保険に加入できることは大きなメリットとなります。

次に「国民健康保険」です。保険料は前年の総所得を基に各市区町村が算出します。そのため、退職した年の給与所得が高い場合は、翌年に保険料も高額となる傾向にあります。収入が少なくなった家計を圧迫することがないよう担当窓口で試算してもらうと安心です。また、扶養家族も個々に国民健康保険に加入する必要があるため家族の人数に応じた保険料負担が生じることも覚えておきましょう。

最後に「家族の健康保険に加入」の場合です。子供や配偶者の被扶養者となる事で保険料負担がなくなります。例えば、協会けんぽでは、退職後にその家族に生計を維持される75歳未満の3親等内の親族を被扶養者としています。収入要件は、130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は180万円未満)であり、同居の場合は被保険者である子供や配偶者の年間収入の半分未満、別居の場合は被保険者の仕送り金額未満となっています。収入には失業手当、公的年金、傷病手当なども含まれます。

注意点として、65歳になったら支払う介護保険料や高額療養費の自己負担限度額は被保険者である子供や配偶者の所得が反映されるため負担増となる事も考えられます。

今後のライフプランに合った選択ができるよう情報整理の一助となれば幸いです。

(FPオフィス ライフエイドファイナンシャルプランナー 三沢恭子)

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