10月24日、「日韓国際交流シンポジウム」が開催された。場所は、甲府市内のシャトレーゼホテル談露館。
山梨県と韓国の忠清北道は1992年に姉妹提携を結び、これまで行政や民間等、さまざまな交流が行われてきた。山梨総合研究所は2007年より忠清北道の清州にある忠北研究院と交流し、毎年「日韓国際交流シンポジウム」を開催してきた。1年おきに日本と韓国とで行い、今年で16回目を迎えた。
今回のシンポジウムのテーマは「脱炭素とエネルギー関係の取り組み状況について」。日本側は、本研究所の在原研究員が、「山梨県地球温暖化(脱炭素)対策」という演題で、山梨におけるGX(グリーン・トランスフォーメーション)の推進について発表した。山梨県内の事例として、甲府市米倉山地域で既に稼働している、そして、2025年にサントリー白州蒸留所に導入されるP2G(パワー・ツー・ガス)システムを紹介し、韓国側から強い関心が寄せられた。P2Gシステムは、太陽光発電による再生可能エネルギーを利用して、水を電気分解することで二酸化炭素を出さずに水素をつくる仕組みである。
韓国側は、忠北研究院のリー・ソヨン研究員が「カーボンニュートラルに向けた忠清北道のエネルギー転換」という演題で発表した。
韓国では、日本の都道府県にあたる自治体として、「特別市」である首都ソウルと、釜山などの六つの「広域市」と、忠清北道を含む九つの「道」が設けられている。そして、それぞれの自治体の電力自立度に注目が集まっている。釜山や仁川などの沿岸部にある自治体は約200%と高い電力自立度であるのに対して、忠清北道はわずか9・4%である。
このような状況の中、韓国では「分散エネルギー活性化特別法」が2024年6月に施行された。この法律は、エネルギー供給体制の分散化と、再生可能エネルギーの導入拡大を目的としている。韓国の公営電力会社である韓国電力が運営している大規模発電所からの供給に頼るのではなく、地域に分散して設置される小規模な発電設備(例えば、太陽光、風力、バイオマスなど)からのエネルギー供給を目指している。
また、年間20万MWh(メガワット時)以上の電力を使用する施設や、一定規模以上の開発事業(例えば、100万平方㍍以上の都市開発事業)については、当該地域で必要な電力の一定部分を分散エネルギーで賄うことが義務付けられた。これにより、電力自立度の低い自治体にとっては経済的な負担が大きくなる可能性があり、忠清北道は多様な発電源の新規設置を通じて分散エネルギー設備の構築を進めている。
更に、大きな関心が集まっているのが「分散エネルギー特区」である。産業通商資源部は、2025年の第1四半期に公募を通じて、分散特区を2、3カ所指定する計画である。この分散特区では、分散エネルギー事業者が電力市場を介さずに電気使用者に直接電気を供給できる特例が適用され、早ければ2026年から発電所周辺の場合、安価に電気を供給することが可能となる。
この他にも、政府が分散エネルギー特区の設置等により電力自立度を高めようとする地域に対して様々な支援や恩恵を提供する方向で政策を推進しており、各自治体の分散エネルギー活性化への関心が高まっている。
このように、韓国のエネルギー事情は大きく変化しようとしている。再生可能エネルギーへの転換が注目される現在において、今後の動向から目が離せない。
(山梨総合研究所理事長 山梨学院大特任教授 今井 久)