2024.09.20
再オープンに合わせ、新調した店の看板㊨。店名は「浅見光彦」ファンだった先代オーナーが命名した
今再(いまさ)珈琲店(甲府市湯村3丁目)は、新たなオーナー夫婦のもと、2019年5月に再オープンした。店内には山の手通りに面した大きな窓から日差しがたっぷりと入り、明るく落ち着いた雰囲気だ。柔らかな木目を基調にした造りも先代オーナーの時代を踏襲している。ミステリー作家・内田康夫の「浅見光彦」シリーズに、かつて登場した喫茶店のモデルにもなった。一方で、「今再ブレンド」コーヒー(500円)はオリジナルだ。オーナーの長井英人さん(61)は「コーヒーの勉強をしながら試行錯誤してきた。自家焙煎を『もう一杯ちょうだい』といわれると、うれしい」と笑顔をみせる。
同店は先代オーナーが開店し、18年7月までの23年間にわたり営業していた。伝授されたレシピでつくる「今再珈琲ゼリー」(550円)と、じっくりと炒めたタマネギをふんだんに入れて赤ワインで煮込む「特製ハヤシライス」(1100円)は今も人気のメニューだ。
先代のレシピでつくるハヤシライスとコーヒーゼリー、そして長井さんオリジナルのブレンドコーヒーが味わえるランチメニューのBコース(1950円)
また、長井さん夫婦が心掛けていることは居心地の良さ。「個人経営の喫茶店は、敷居が高いと感じる人もいる。好きなように過ごしてほしいし、コーヒーも自分の好みに合わせて飲んでほしい」
ジャズが流れ、穏やかでリラックスできる癒しの店内。注文すると、ウエッジウッド(イギリス)やリチャードジノリ(イタリア)、大倉陶園など高級食器で提供される。食器にこだわっていた先代オーナーから譲り受けたもので、長井さん夫婦がお客さんの雰囲気に合わせセレクトしているという。
先代オーナーからの代替わりは偶然が重なった。それまで長井さんは県立高校教諭、妻・恵美さん(58)は小学校教諭で、祝いごとのたびに同店を訪れていた。閉業を知って店に立ち寄ると、先代オーナーが本音をこぼした。「本当は継いでくれる夫婦がいればいいんだけどね」
同店からの帰り道、「やってみない?」と珍しく意見が一致した。すぐに先代オーナーに電話で打診したが、帰ってきた答えは「1週間、しっかりと考えたほうがいい」。それでも気持ちは変わらず、教諭生活の区切りや子どもたちの進学など、ちょうどタイミングが良かったこともあり、閉業の翌月には引き継ぎへの話が進んでいた。
再開から6年。コロナ禍では休業も余儀なくされたが、今では昔からの常連客や元同僚のほか、SNSをきっかけに若者らも訪れる。店を愛し続ける長井さん夫婦の優しいもてなしと〝心休めの空間〟を楽しんでいるのだろう。
夏季限定の「紫蘇ジュース」(600円)は、すっきりとした甘さと香りが特徴。コロナ禍に恵美さんが考案したメニューという
店内は明るい日差しが入り、落ち着いた雰囲気
甲府市湯村3の2の44
☎090(4961)7552
営業時間…午前10時から午後6時
定休日…水曜(インスタグラムで要確認)