2025.07.04
梅雨の最中とはいえ、今年は6月から真夏のような暑さが続いています。甲府では全国一の猛暑日を記録するなど、すでに夏本番を感じさせる日もありました。湿度と暑さが重なるこの時期、体力を奪われやすいので、どうか体調には十分ご注意ください。
さて、そんな夏の始まりとともに、私たちの「働き方」や「将来設計」について、これまでの常識を見直す動きが出てきています。
今、注目されているのが、今年6月に成立した年金制度の改正法です。この改正によって、遺族年金や厚生年金のあり方が大きく変わろうとしています。
まずは、2028年4月から段階的に実施される、遺族厚生年金の支給要件の見直しです。現在は、30歳未満で子どもがいない妻に限り、遺族厚生年金が原則5年間の有期支給となっています。これが改正後は、男女ともに60歳未満で、18歳年度末までの子がいない場合は、原則5年間のみの支給となる予定です。男性は28年4月から、女性は40歳未満から段階的に導入され、48年には60歳未満のすべての女性が対象となります。
出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」から
つまり、これまで「夫に万一のことがあれば、年金が一生支給される」と考えていた人にとっては、大きな制度変更となります。「遺族年金は安心の備え」と思っていた方にとって、これをきっかけに自分自身の年金や働き方を見直す必要が出てきました。
もう一つの重要な改正が、「106万円の壁」の撤廃です。26年10月をめどに、厚生年金の加入要件である月収8万8000円以上という基準が廃止され、代わりに労働時間などの実態に応じた加入が求められるようになります。対象企業も段階的に拡大され、「年収の壁」から「労働時間の壁」へと、社会保険の仕組みが変わっていくのです。
これまで「扶養の範囲内で働く」ことが手取りの面では効率的とされてきました。しかし、社会保険に加入すれば、将来受け取れる年金が増えるだけでなく、病気やけがで働けなくなったときの傷病手当金、出産手当金、失業給付など、いざというときの保障がぐんと厚くなります。短期的な損得だけでなく、〝自分を守る制度〟として見直してみる価値は十分にあります。
これからの時代、「扶養の安心」は永遠ではありません。家計の助けになればと始めたパートや短時間の勤務も、長い人生の中では大切なキャリアであり、将来の保障につながる働き方です。制度に合わせて働き方を「我慢」するのではなく、自分に合った働き方を「選ぶ」ために、今のうちに制度を正しく理解し、自分の味方につけていくことが大切なのではないでしょうか。
(FPオフィス ライフエイドファイナンシャルプランナー 三沢恭子)