山梨県内のニュースを独自の視点で解説。
2010.8.6
誤算
また1年延期になった。県が静岡県と進める富士山の世界文化遺産登録である。県や市町村関係者によれば、すべての〝誤算〟は昨年9月だったという。県は当初、対象地域(構成資産)を富士五湖は「湖面だけ」、富士山は「5合目以上」としていた。だが昨秋、両県が国際専門家会議に招いたユネスコ関係者は、登録に向けて五湖は「湖岸まで拡大」、富士山は「2合目以上」とすべきだと指摘した。「湖面だけでは湖とは言えない」「山は裾野を含めて、はじめて山」との主旨。至極もっともなご託宣だった。もともと県は北麓観光を支える業者や市町村を配慮、さらに演習場の存在なども加味した結果、一部に前例もあったことから「湖面だけ」「5合目以上」という綱渡りのような当初案をひねり出した経緯がある。無論、当時から「姑息な手法」や「山梨事情が世界基準をクリアできるか」など批判はあったが、早期登録を掲げた以上、「現実的手法」として推し進めてきた苦肉の策だった。だいたい計画当初の2006年段階に至っては対象地域は「5合目以上」だけ。こんな地元の論理だけでまとめたプランに、国の文化審議会が待ったをかけ「五湖」追加を要望したいきさつもあった。
ただ今回の対象地域の拡大は事実上、計画の全面見直しに等しかった。県は範囲の確定のため国内の学者、文化庁、地元市町村などとの線引き作業の調整に手間取ったと弁明する。県学術委員会の最終的な範囲の確定は先月5日。ユネスコには国が一括して国内の候補地を推薦する性格上、対象地域はあらかじめ国の文化財指定を受ける必要があり、同指定には観光業者ら関係者の同意(延べ355件)が必要となる。だが、県はこの同意を取り付けた上で、7月末までに文化庁に推薦書原案提出とした当初計画は到底間に合わないと判断、提出時期の1年延期を発表した。ボート業者らは登録による規制強化が死活問題に繋がると危機感を募らせていた。県は「全力で取り組んだ結果であって、業務遂行上の問題点はなかった。あんな重い宿題(対象地域の拡大)が出ると思っていなかった」(世界遺産推進課)と説明する。同計画の延期は登録時期を1年先送りした昨年1月に次いで2度目。
行政サイドにとって世界遺産登録は環境保護の徹底と、知名度向上による観光振興という両面を可能にした一石二鳥の施策と見ている。前県政時代の自然遺産登録の目標から現県政の文化遺産への仕切り直し、さらに対象拡大という大々的な方針転換。登録最優先の県行政はその都度、手探りのまま振り回されてきた印象は強い。一連の延期騒動は様々な論議を呼んだが、政治的側面から見ても、次期知事選を前に県民に目に見える形で〝1期目の実績〟を残したかった現県政にとって、またも思惑が外れたことは痛かったはずだ。
2010年7月30日付「原点」
2010年7月23日付「尖兵」
2010年7月16日付「自滅」
2010年7月9日付「始動」
2010年7月2日付「不偏不党」
2010年6月25日付「県庁不信」
2010年6月18日付「自民の血」
2010年6月11日付「二大政党制」
2010年6月4日付「利害」
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