12月10日付
明野処分場問題

全国に誇る 「山梨原則」 確立のために

カギは 「本気」 「情報公開」 「選択の余地」
地元の調査受け入れは解決への第一歩


 11月1日に北杜市が誕生して、地方自治体としての明野村はなくなった。だが、この地域の抱える問題が消滅したわけでもない。
 明野では、地域住民への基本的窓口サービスが総合支所となった旧村役場でおこなわれているためか、合併で何かが変わったという感じはあまりないという。しかし、白倉政司新市長が当選後に口にしたように、明野の産業廃棄物最終処分場問題が北杜市全体にとって大きな問題であることは間違いない。
 明野の処分場問題は、10月29日の本欄で伊藤洋氏も指摘している通り、いくつかのボタンの掛け違えから始まった。
 当初はもっと標高の低い地点が候補だったが、隣接自治体の反対で標高の高い、水源地の浅尾に変わった。県は1994年に地域の同意を得たと言い続けているが、これは、ダイオキシンの危険性などの情報提供が不十分なままの、しかも戸主層だけの意思表示で、将来の地域を支える若い世代や女性の声を反映していなかった。
 その後10年、廃棄物処理をめぐる認識は大きく変化したのに、県は94年段階の計画に固執し、村に圧力を加え続けた。
 村民の抵抗に対する県の圧力は徹底しており、県が関与する新規事業はもちろんのこと、継続事業でさえストップさせて、いわば明野地域を乾し続けているという。地域住民はこうしたやり方に不満を示す一方で、何とかこの問題を解決しなければ、将来に向かって生活が苦しいという声もかなり強くなっている。
 問題解決の途 (みち) はないのか。実は、すでにその方向性は見え始めている。
 まず、今年3月末に当時の篠原真清村長が山本栄彦知事に提言した新条例制定がある。これは、廃棄物の発生抑制と資源化を推進して可能な限り廃棄物を減らすと共に、市民参加と徹底した情報公開などで安全性が確保できる処理場づくりの制度化を目指している。私はこれを「山梨原則」と呼びたい。後者は、今の廃棄物処理法の手続だけでは地域住民の生命健康保護や地下水汚染防止などが十分にできないから、より確実に安全性確保を図ろうとするものだ。
 県側は当初、この提言を抽象的で不十分としてきたが、9月の峡北地区最終処分場整備検討委員会ではこれに歩み寄り、提言を生かした条例づくりに意欲を示した。10月末の検討委員会では篠原村長も県の姿勢変化を受け止め、候補とされる地域や施設の安全性が確保され、選定過程が透明化されることを前提に、浅尾以外の明野地域内での適地調査を受け入れる姿勢を明らかにしている。
 これについて、明野では、ある地点を処分場候補にしたのでは、との憶測が流れて論議になったようだが、これはあくまでも明野側の提言採用を条件に適地調査を受け入れるという意思表示である。だが、これは解決への第一歩とみるべきだ。
 徹底した発生抑制策をとっても廃棄物は出るし、これを域内で処理するのは当然だ。そして、これまでの経過を踏まえるならば、浅尾断念を前提に、先ずは明野に適地があるかないかをしっかり調査することが出発点になる。反対運動をしてきた方々には言い分もあろうが、こじれきった問題決着の方法としてはこれが筋道ではないか。  その場合に、私は次の点を押さえる必要があると考えている。
 第一に、県が本気で「山梨原則」 実現のための条例制定に踏み切ること。
 第二に、適地調査は明野地域の住民を加えて、徹底した情報公開と透明な手続きで行うこと。
 第三に、明野地内にどうしても最終処分場の適地がないと分かったら、別の選択をする余地を残すこと。
 公共関与の処分場という前提も再考の余地がある。監督する立場の山梨県と処分場を建設・運営する環境整備事業団は一心同体で、かえってきちんとした監視ができない可能性があるからだ。
 明野村がなくなる前の決着はできなかったが、新市誕生はこの地区が一体となって問題解決に取り組むチャンスともいえる。そして、ここで 「山梨原則」 が確立されれば、全国に誇れる持続可能社会形成の第一歩となるはずだ。





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